時間がゆっくり流れる島

〜 田代島 〜

猫が天国へ旅立ったこともあり、ふと小さい島のことが頭に浮かんだ。
ひょっこりひょうたん島のモデルになったといわれ
野良猫たちが自由に暮らす島、田代島。
誘われるように11月初めの連休に自然と向かっていた。


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宮城の石巻港は小さな港だ。港の前の網地島フェリーの事務所も小さな建物だった。
船は1日3回石巻港と田代島、網地島のふたつの島を往復する。
そのうちカーフェリーは1便だけ。その船「マーメイド」に乗り、午後12時に出港。
カーフェリーといっても小さな船だ。車は1台乗ればいいほうだろう。
乗船する人もそれほど多くなく、ほのぼのした空気が流れる。
荷物だけを預ける人もいるらしく宅急便かわりになっているようだった。


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田代島まで約45分の船旅だが、この日は風が強くかなり船が揺れていた。
しかし左手に牡鹿半島を見ながらの船旅はいいものだ。
やがて田代島が見えてきて、旅人としての気持ちが高ぶる。


マーメイドの乗組員さんもオートバイに乗っているらしく丁寧に扱ってくれた。
この時期にオートバイで船に乗る人は珍しいのだろう。
それより観光目的で島に渡る人が少ないのだと思う。


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まず北に位置する小さな大泊港に寄ったが誰も降りる人がいなかった。
そして仁斗田港で降りる人は2、3人だけだった。あとの人は網地島まで行くようだ。
田代島は宮城県石巻市になる。北上川の河口から東南約15kmの海上に位置する小さな島。
人口も年々減る一方で現在は100人いない。
とりあえず民宿に電話をかけたら3軒目で部屋が取れたので安心した。


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まず仁斗田港近くの民宿「ふじや」で挨拶をしてから、田代島巡りに出発。
小さい島なので坂が多い土地に家が複雑に建ち並んでいて迷いそうだ。
そして仁斗田のあちこちで猫を見かける。
坂の街の中を猫が歩いていたり寝ころんでいると絵になる。

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仁斗田からすぐにマンガアイランドなるキャンプ場が目に入ってきた。
猫のかたちのロッジがポツンとふたつある。
しかしキャンプ場は忘れられたように寂しい雰囲気だった。
どうもこの島にはキャンプ場が似合わない気がしてきた。

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そのまま走って行くとススキの中を過ぎて島南端の三石崎へ。
松林の岬の先端まで行くことができて断崖からの見晴らしがいい。
しかし静かだ。風の音しか聞こえない。誰にも会わないので不思議な感じがする。

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ここから林の中を北へ走っていると、いきなり海が見えてきた。
あまりの景観にしばらく時間が流れるのを忘れた。

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小さい島なのに、いま自分がどこにいるのか分からなくなった気がした。
まるで白日夢のように気持ちよく風に吹かれていた。

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たぶん先に見えているのが島北端の二鬼城崎だろうか。
二鬼城崎は途中までしか歩いていけないので、林の中から先端が見えるだけ。


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わずかな時間で島を南から北まで走ったんだから、どれだけ小さいか分かる。
二鬼城崎から大泊港へ出てみた。仁斗田港より小さな港は静かだ。誰もいないのだ。
しばらくして漁師らしきおじさんが歩いてきたくらいだった。

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仁斗田ともうひとつの町の大泊も坂の多いところ。
オートバイより歩かないと迷ってくる。家や路地が複雑で、まるで迷路にいるかのようだ。
それにしても島には漁を祈る神社などが大小たくさんある。

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廃屋が多いので、そこに猫に現れると異次元にいるかのような気がする。
これから島を出て行く人が増えると廃屋も多くなるのか。

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それから島の中央に入って行くとポツンと小さな神社がある。
今回、目的のひとつだった猫神様。
この島は漁業で生計を立てていて、猫は大漁を招くということで昔から大事にされてきたらしい。
猫は守り神として大切にされてきたのだろう。
だからこの島で犬を飼うことが許されないらしい。

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そういえば犬もいないから町の中が更に静かなのだろうか。
あとで宿のお母さんに聞いたら猫はすべて野良だそう。つまり飼い猫は一匹もいないのだ。
猫が自由に暮らす島、田代。何もないが面白くて魅力を感じてしまう。


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仁斗田の民宿に泊まったが、さすが漁の島だけあって魚料理を中心に豪華だった。
安い料金で家に帰ったかのような暖かいもてなしに心が安らいだ。

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この時期は釣り人しか来ないようで、やはり民宿で一緒だった人たちは釣り目的だった。
釣りをできるといっても島のほとんどは断崖なので、港の防波堤か船しかないようだ。

そして島の夜は早い。昼間以上に静寂に包まれていった。

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