北限に咲く島へ 〜北海道2009〜

・利尻島

うっすらと明るくなってきたころに目が覚めて、外を見てみると雲が広がっている。
さて、どうするか。ここが決断どころだ。
迷っても仕方ないので、登山口まで行ってみることにした。
明るくなった5時くらいにキャンプ場を出発。

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利尻山には雲がかかっているが、取れそうな雰囲気もある。
期待しながら登山口の利尻北麓野営場の駐車場に着く。
余計な荷物をWのシートに置いて、登山の準備をする。

キャンプ場にはテントがいくつかあるので、やはり利尻山に登る人であろうか。
トイレを済ませて、5時半に歩き始める。

といっても水場まで舗装された散歩道が続く。
まずは唯一の水場である甘露泉水で空のペットボトルに水を満たす。
夏の登山で水だけは重要だ。

どうやら雨の心配だけは大丈夫そうだ。
三合目の標識ではここが標高270メートル、頂上まで5590メートルとある。
ここから本格的な登山開始だ。

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しばらくは林の中を歩くので、一歩一歩と前へ進む。
すると木々の間から太陽の日差しが目に入った。
これは晴れてきたんじゃないか。
うれしい朝日に元気がもりもりと出てきた。

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やがて見晴らしのいい六合目の広場に出ると、あまりの景色に圧倒される。
しかも青空で雲もどんどん流れている。
やった! 今日、登って正解だった。

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ここまで同じタイミングで休憩する人がいて、そのたびに話をするので飽きることがなかった。
他にも何度も顔を合わせる人たちもいるから、リズムよく登山できている。

登りはきつくなってくるけど、高山植物が多くなってきた。
きれいな花がたくさん咲いているので楽しくなってくる。
花を見ながらの登山は夏ならではの楽しみだ。
本当だともう少し早い時期のほうが種類がたくさんあるんだろうけど。

八合目の長官山から見る利尻山が見事だった。
ここから見る姿が一番かも。
利尻山は遠くから見ると美しい姿をしているけど、近くで見ると結構荒々しいんだよね。
いろんな表情を見せてくれるのも魅力だと思う。

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やがて一度、下っていくと九合目への途中で唯一の山小屋がある。
悪天候などの避難小屋として使われているそうだ。

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さらに登っていくと、だんだんと急な岩場になってくる。

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さらに進むと頂上手前でもうひとつの登山道である沓形コースと合流。
沓形コースの登山口のほうが標高があるが、難所があるので一般的にはこの鴛泊コースを使うようだ。

しかし頂上が近くなってくると岩場と砂利のガレ場が続くので登りにくい。
落石もあるようで気を使う。
こんなに荒れている登山道だとは思ってもいなかった。
たくさんの火山礫の石が転がるので余計に体力を使う。
昔は生きていた山なんだと実感する。
とにかく天気がいいので、暑くて汗が止まらない。

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そしてようやく利尻富士の頂上に到着。
こんなに達成感でいっぱいになるとは思わなかった。
山頂は1721メートルと高くはないけど、三合目から登るから余計に達成感が強い。
標高差が1200メートルだからなあ。

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それほど広くない山頂の北峰には小さな神社あり、思わず手を合わせてしまう。
なんといっても景色が素晴らしい。
雲の流れが早いので、そのときそのときで景色が変わっているようだ。
遠くには稚内や宗谷岬がハッキリと見える。
今まではオロロンラインから見ていた利尻富士を逆から見ていると思うと感慨深い。

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残念ながら山の北西側は雲に覆われて見ることができない。
本当なら360度ぐるっと見晴らしがいいらしい。
でも反対側は海しか見えないからいいとしよう。
本当の頂上は目の前の南峰だが荒れているため立ち入り禁止になっている。
特徴的なローソク岩が霧の中でかすかに見えるくらい。

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30分ほど休憩していると次から次と山頂に人が来る。
ほとんどが途中で追い抜いた人たちだった。
基本的に利尻山は日帰り登山の山だから、早朝の同じ時間帯に出発する人が多くなる。
それでも今日、登っている人がそれほどの数ではなかったので山頂があふれることはなかった。

さて下りだけど、あの崩れそうなガレ場には気を使う。
登りより恐いので慎重に下っていく。
途中で登ってくる人は数人いただけだった。
さすがに遅く出発して登る人はいないようだった。
ガレ場を過ぎると、やっと一安心して普通の登山の下山スタイルになる。

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八合目まで戻ってくると、礼文島がハッキリと見える。
登ってくる途中では雲の切れ間からしか見えなかったので感動。

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あとは暑さとの戦いだけど、林の中になると木陰になるので助かる。
たまに吹く風が気持ちいい。
考えてみれば晴れると暑いけど、ここは離島の最北の山だった。

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ようやく水場の甘露泉水に戻ってきたときは、やっと終わった〜と感無量。
すぐ冷たい水を飲むと言葉にならない幸せに包まれた。
名前のとおり、本当に甘い水がうますぎる。

登っていた人がどんどん戻ってくると、自然とお疲れ様と口に出る。
何度も途中で顔を合わせるので一緒に登山した気分になってしまうかも。
一番よく話をした神奈川から来ていたAさんに、サッと冷やしたキュウリを半分もらって食べたらおいしかった。
こんなに知らない人と仲間意識が高まる登山は初めてだった。

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また登山口である利尻北麓野営場の入り口に戻って、利尻山の登山終了となった。
登りに小休憩を入れて約5時間、下りに約3時間半、頂上での休憩に30分。
合計で約9時間かかったが、とても気持ちのいい疲れでいっぱい。
ちなみに平均だと10時間かかるらしい。
なので、日帰り登山だと、どうしても早朝出発になってしまう。
大きなザックを背負った二人がこれから登ると言っていたが、唯一の山小屋を使うとのこと。

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あと利尻山には環境保護のためトイレがない。
そのため携帯トイレを持参して使うようになっている。
登山道の途中に携帯トイレを使うための小屋がある。
実はその携帯トイレを買うのをすっかり忘れていたのである。
セイコーマートで買おうと思っていたら、7時から始まるので買えなかったのだ。
昨日のうちに買っておくべきだった。
仕方ないので戻ってくるまで我慢すると決めた。
暑かったせいで大量の汗をかいたためかトイレは必要なかった。
これで寒かったりしたら、どうなったことやら(^_^;
まあ、最悪は空いたペットボトルにすればよかったんだけどね。

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利尻山で見た花たち。
ミヤマアキノキリンソウ、シュムシュノコギリソウ、イワギキョウ、リシリブシ、タカネナデシコなど。
もう少し早いと、たくさんの種類の花が見られるんだけど、これだけでも満足だった。

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さあ、早くキャンプ場に戻って温泉に入りたいしビールだよな。
しかし今日は天気がいいのでWで走ると気持ちいい。
利尻山を見ると頂上付近には雲がかかってきた。
島自体が山だから、すぐ雲が覆ってしまう。

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すぐビールを飲もうと思っていたのだが、利尻で名物のミルピスの看板を見たら急に飲んでみたくなった。
前に来たときも飲んでいなかったのだ。
一軒家のような店に入ると、田舎の喫茶店といった感じで店のお母さんと話し込んでしまった。
山を登ったあとで、かなりハイになっていたかな。

ミルピスは想像したとおりカルピスのような乳飲料だった。
おつまみのようなお菓子もついて、他の飲み物の試飲もした。
お母さんに利尻山に登ってきたことを話すと、こんなに天気がよくなるとは思わなかったので、よかったね〜と言ってくれた。
天気予報では曇が続いているので、稚内と離島では違うのかもね。

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キャンプ場に戻るとほとんどのテントはなくなっていた。
しかし昨日うるさかったファミリーが連泊していたので、テントを移動することにした。
ちょうど固定の木製テーブルとベンチ周辺が空いたから近くへ行くことに。

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一息ついて温泉に行こうと思ったら、登山で何度も一緒になったAさんが来てくれた。
ずっと北海道を車で走っていて、車の中で寝泊まりしているそうだ。
道の駅やトイレのあるパーキングが多いから不便はないみたい。
別れるときに沓形岬のキャンプ場にいますよと話していた。
これから温泉に行くと話すと、それじゃ買い出しに行ってくるとのことなので、またあとで会いましょう。

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温泉から戻ると、ちょうど夕日がきれいだった。
今日の夕日が言葉にならないくらい素晴らしい。
やはりこのキャンプ場にして正解だった。
ちなみに昔は無料だったここも300円かかるようになっていた。
これだけきれいで快適なキャンプ場なら文句はいえない。
ただ風が強いと大変だけどね。

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今夜はAさんと利尻山登山の打ち上げで乾杯。
山登りしたあとのビールって、なんてうまいんだろう。
セイコーマートで買った袋入りのジンギスカンを野菜と一緒にフライパンで炒める。
簡単に作ったジンギスカンでもうまい。
この日は登山のことで話し込んだ。
今回の北海道の旅でAさんは羊蹄山などを登ったらしい。
百名山を達成するまで、あと三つの山だというので感心してしまった。
こちらは基本的に日帰りできるところしか登らないので夢のような話なのだ。
最後に屋久島の宮之浦岳を登りたいというので、自分もまた屋久島に行ったときは登りたいと盛り上がった。

さすがに早朝に起きて、9時間もの登山をしたので疲れもあり、8時半にはお開きにした。
夜空を見上げると満点の星空が輝いていた。
これなら明日も晴れそうだと、うれしくなり眠りについた。


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