さあ、赤牛岳と読売新道へ向かおう。
だんだんと緊張感が高まってくる。
慎重に岩場を下っていく。
さすがにこの時間だと誰もいない。
赤い牛だけが正面で待っている。
振り返って見上げると水晶岳の向こうに槍が見える。
思ったより岩場が続くので雨でなくてよかった。
高天原温泉との分岐の温泉沢ノ頭に着く。
かなりコースタイムより遅い。
ここからの赤牛岳の眺めが素晴らしい。
横にはずっと薬師岳。
近いようで遠い赤牛岳。
後立山連峰のシルエット。
ずっと稜線を歩きながらビバーク地を探していた。
詳しい場所が分からなかったので、明るいうちに見つけたい。
すると松並木の向こうの窪みに整地されたような場所があった。
小さなテン場のようだったので間違いない。
ソロテントなら三つは張れそうな場所だ。
稜線だと風をまともに受けるので、ここだと安心できそうだった。
もう6時半なので暗くなる前に着いて助かった。
考えてみれば初めてのビバーク。
テントを張ると雨が降ってきたのでタイミングもよかった。
翌日はとうとう読売新道なのでビールを飲んで眠りについた。
翌朝は6時半にビバーク地を出発して赤牛岳を目差す。
小雨が降ってきたのでカッパを着るけど、すぐ雨は止んでしまった。
肌寒いし怪しい空模様なので着たまま歩き出す。
目の前の赤牛岳の山頂には雲がかかっている。
赤い砂地の稜線が続くので荒涼とした雰囲気だ。
ときどき岩場を越えたりして前へ。
重かった水が減ってザックが軽くなったことが助かる。
とうとう山頂が見えてきた。
午前8時、ついに赤牛岳の山頂に到着。
北アルプス奥地まで歩いてきたことに達成感でいっぱい。
曇り空だけどうれしい。
目の前には存在感ばっちりの薬師岳。
しばらくすると身軽な登山者が来たので話し込む。
水晶小屋からのピストンらしい。
やはり身軽だと早い。
読売新道にこだわらなければ、赤牛岳への往復が手軽かもしれない。
これなら三俣からの日帰りも可能そうだ。
30分くらい赤牛の山頂を満喫して三角点にタッチ。
最初で最後かもしれない赤い牛ともお別れ。